Project M Annex

日本近代文学・比較文学・表象文化論の授業や研究について、学生や一般の方の質問を受けつけ、情報を発信します。皆様からの自由な投稿を歓迎いたします。(旧ブログからの移転に伴い、ブログ内へのリンクが無効になっている場合があります。)

何がおもしろい仕事

 就職相談に来る学生に、「先生はどうしてこの仕事に就くことに決めたんですか」と聞かれるのですが、答えられません。いつ決めたんだろう? いや、決めなかったし、悩まなかったですね。だから、就職に関して、私は良いロールモデル(お手本)にはなれません。すみませんm(_ _)m。

 むしろ、私の周りには先輩の大学院生が大勢いて、研究者のロールモデルには事欠かなかったのです。4年次に進むころには、大学での勉強が終わるとは考えられなくなり、あとは目の前にあった道を歩いてきただけです。それから現在に至る道が単にまっすぐだったとは言いませんが、万一、この仕事に意義を感じていないとすれば、これまで支援してくれた私自身の先生や係累に対して申し訳が立たないと思います。

 おもしろいことは、まず、私は人の話を聞くことは嫌いですが、自分の考えを表現するのは好きでした。そうでなければ、この仕事はやってられませんよね。ただ、話すのは苦手なので、初めのうちは冗談までノートに打ち込んでから講義していたのです。最近は、年のせいか、けっこう講演などを聴くのも耐えられるようになってきましたが、それでもやはり、聴きながら、(この講師の話し方は、ここをこうすればもっとよくなるのにな)、などと余計なことの方を考えてしまいます。

 それから、学生の考えをずっと聞いていると、ときどき、(えっ? これは!)と思うようなスゴイことを言うことがあるのです。つまり、自分では(まだ知識が足りないので)スゴイという自覚はなくても、それまで研究史で言われてなかったことや、理論的に水準の高いことを言う学生が、年に一人や二人はありますね。その時は、私は躊躇なく、「それはスゴイ。本当にスゴイ」と言っています。

 たぶん、そういうことは、大学院重点化大学ではもっと多いのでしょう。まあそれは当然でしょうが、なかなかどうして、こちらも捨てたものではありません。私はそういう演習発表、卒論発表に出会ったときに、自分の研究以上にうれしいと感じ、どうにかしてそれを伸ばして、公開させてあげたい、と思ってしまうのです。それが、この仕事の大きなやり甲斐ですね。……あっ、でも、「できない子ほど可愛い」というのも、やっぱり真実ですけどね(^_^;)。