Project M Annex

日本近代文学・比較文学・表象文化論の授業や研究について、学生や一般の方の質問を受けつけ、情報を発信します。皆様からの自由な投稿を歓迎いたします。(旧ブログからの移転に伴い、ブログ内へのリンクが無効になっている場合があります。)

2006-03-01から1ヶ月間の記事一覧

文学とパワーポイント

研究教育の現場では、ある時代にはコピー機が、次の時代にはワープロ、そしてPCが、新しい技術として話題となりました。今ならばさしずめeラーニングでしょう。私の時代には、既に中学校でも、当時「ファックス」と呼ばれた輪転式の印刷機を備えていましたが…

人とネットワーク

第12回大学教育研究フォーラムは、研究発表・小講演・ラウンドテーブル(RT)とも複数会場に豊富なテーマが用意されて、2日目も盛況でした。私がこの日聴いた内容は、実に印象的でした。 このフォーラムの出席者は、多くが各大学の高等教育センターやFD関係…

第12回大学教育研究フォーラム

昨日から、京都大学で開かれているFDのフォーラムに出席しています。昨朝は、カリキュラム研究部会の座長を務め、YUサポーティングシステムの研究発表をしました。午後のシンポジウム「FDの新たな組織化をめざして―教員、学生、事務職員―」では、久留米・名…

作者、テクスト、文化研究

私はテクスト論者だと見られることが多いようですが、別に自分をそうだとは思っていません。ロラン・バルトの「作品からテクストへ」とか「作者の死」は正しいと思いますし、おおかたの文化研究なるものはおもしろくないと思っていますが、だからと言って作…

アイロニー

とても散らかった部屋を見て、「この部屋はずいぶんきれいだね」と発話する時、それはアイロニー(皮肉)だと言われます。現代詩の言葉遣いはアイロニーに満ちていて、ストレートなメッセージとしては伝わってきません。例えば「詩は滑稽だ」という谷川俊太…

卒業式

学校という職場に勤めていると、卒業式は年中行事で、毎年繰り返す、印象深い節目となります。印象深い理由は、言うまでもないことですが、それは、完成であり、また出発であるとともに、何よりも、別れであるからです。卒業式を最後に、2度と会わない、とい…

発話と主体

言葉を発する主体と、その言葉との間の関係は、日常的には自明のように思われますが、実際には単純ではありません。単純でない場合がある、のではなく、どんな場合にも単純ではないのです。 「私はあなたが好きです」と好きでもない人に言う場合、一般には嘘…

何がおもしろい仕事

就職相談に来る学生に、「先生はどうしてこの仕事に就くことに決めたんですか」と聞かれるのですが、答えられません。いつ決めたんだろう? いや、決めなかったし、悩まなかったですね。だから、就職に関して、私は良いロールモデル(お手本)にはなれません…

啓蒙について

「神話は啓蒙であり、啓蒙は神話である」。これはマックス・ホルクハイマー、テオドール・W・アドルノの『啓蒙の弁証法』の骨子です。私はこの本を読んで、文字通り蒙を啓(ひら)かれました。難しい本ですが、長く続く効力を持っています。 古代の神話は、…

係争中の主体

テクストに対する、十分な水準にある読解は、定量分析によってその正否を決定することができません。そのような複数の読解は、各々がそれなりの正しさを有しています。そのような素朴な意味で、真理は複数的であり、真理はその概念枠に対して相対的です。 (…

考えずに答えよ

「では、このことについて、あなたはどう考えるのですか?」 「……(無言)」 毎年の演習発表で繰り返される光景です。発表者は、質問があると、しばらく、時としてかなり長い間、考えます。「質問をどうぞ」と指名すると、質問者もまた、しばし無言のまま、…

総目次(2006年1月~2月)〈2〉

【授業の補足】 先行研究の引用の仕方 論文の探し方(日本近代文学) 感想文と論文 ネット・エチケットについて レポートの書き方 詩を読む 「大人の仕事は、決してふるさとへ 断念と発話 (比較)文学のおもしろさ カラー映画に見る昭和初期の日本 【こころ…

総目次(2006年1月~2月)〈1〉

【サイト告知】 品評をしないこと Project Mのリニューアルについて 質問・投稿の仕方について このサイトについて 【術語集】 メタフィクション2 フレーム(概念枠) ドキュメント形式 人物(小説の)2 人物(小説の) 句読法(映画の) メタフィクション…

先読みについて

英会話の達者な先生から、「英語では先読みをしないことが大事なのよ。相手の言っていないことまで言うと、『あなたは人の心を読むのか?』なんて言われるわよ」と教えられました。日本では逆で、人の気持ちを読んで行動するのが、「気が利く」などと評価さ…

メタフィクション3

メタフィクションはフィクションの一種ですが、逆に、フィクションこそメタフィクションの一種だとも言えます。今・ここにある記号は、記号である限りにおいて表意作用を行いますが、それがどのような意味であるかは、概して一義的には決めることができませ…

倒置法

知っていますよね?、倒置法のことを。言うことができますか?、その機能を。多くのことが、まだ書かれていない、と思われます。書くべきことが、まだある、という感覚が、書くことを始めさせます。 倒置法なんて、詩を読む際の基本です。中学校でも教わるか…

先行研究への対応

論文の書き方や、演習発表の準備において、多くの学生から聞くことのできる感想が、「他人の論文を読むと納得させられてしまい、自分の考えを独自に表明することができなくなる」というものです。誰しも、感じたことのある思いだろうと思われます。 他人の意…

マルメロの陽光

教授と私は、チサンホテルの横の、旅館を改造したような飲み屋で酒を飲んでいました。ユルマズ・ギュネイの『路』と、ビクトル・エリセの『ミツバチのささやき』の2本立てを見て、「世の中にはまだ、いい映画というものがあるのだな」と言い合っていました。…

パラダイム

トーマス・S・クーン『科学革命の構造』で提唱された、科学史の用語です。自然科学の歴史は直線的な発展の経過ではなく、相容れないパラダイムの交替の歴史である、と説きます。パラダイムは、専門母型とか、規範的教科書として言い換えられます。専門はデ…

初心忘るべからず

私は車の運転をこよなく愛する者ですが、街を走っている車が、原則を守らないのには、常々驚かされます。ウィンカーを出さずに曲がる、曲がり始めてから出す(!)、一時停止線を守らない、交差点の角で堂々と駐車する、両側同位置に駐車する、制限速度を守…

様式と技術(映画の)

映画史の講義は、少しなりとも映画に興味のある学生が受講すると思われますが、それでも大半の学生が、「サイレント映画をまともに見るのは初めて」ということです。それも、瞳を切り裂く映像から始まる、ルイス・ブニュエルの『アンダルシアの犬』などから…

文語定型詩・口語自由詩

きわめて頻繁に用いられながら、概して、よく分からないままになっている典型的な文芸用語が、この文語定型詩・口語自由詩です。 まず、文語と口語の区別ですが、この場合、文語は書き言葉ではなく、古語・古文を、口語は話し言葉ではなく、現代語・現代文を…