Project M Annex

日本近代文学・比較文学・表象文化論の授業や研究について、学生や一般の方の質問を受けつけ、情報を発信します。皆様からの自由な投稿を歓迎いたします。(旧ブログからの移転に伴い、ブログ内へのリンクが無効になっている場合があります。)

補足集

複数のWordファイルを文末脚注を保持したまま結合する方法

Wordを使用した修士論文・博士論文などの長い論文で、各章の文末に脚注を置き、各章ごとの脚注番号を維持したまま、各章のファイルを結合する方法です。 下記に記述したのはWindowsですが、Macではメニューから同じものを選択して実行可能です。 なお、一太…

CiNiiの検索結果を簡単にExcelに移す方法

論文の探し方(日本近代文学)という記事を2006年に公開しましたが、その後のWeb環境の進展により、現在ではCiNiiを利用するのが一般的となっています。もちろん、そこで紹介した国文学研究資料館や国会図書館の検索も、引き続き拡充されていますから、併用…

指導するということ

私は助手時代までは自分の論文を先生に見てもらっていました。その頃は、いつまでもこうして先生に見てもらうのだと思っていたものです。でも、よく考えると、助手になってからは、学生時代のように添削されたり、厳しいコメントを口頭・文面で与えられるこ…

昔、書店というものがあった

もちろん、今でもあります。しかし、街中の小さな個人経営の書店は、めっきり数が少なくなりました。 高校時代、授業をサボっては、通りの小さな書店で本を見ていたものです。覚えているのは、一度など、ぶらっと入って文庫本のシャルル・ペロー童話集を手に…

子を持って知る子の恩、または、達成感について

某年某月某日、某大学(教養教育)での講義中:「文学なんてものは、娯楽ですから、人間の生命にとって必要不可欠なものでは、ありませんね。しかし、必要不可欠でないものこそ、人間の人間たる所以に繋がっていることは間違いがありません。 文学研究も、正…

質問の仕方、答え方

発表の構築にも一定のやり方があるのと同様に、質問や応答の仕方にだって、それなりの方法があります。もちろん、演習や研究発表をまともに成立させることは、口頭発表に多くを負っていますが、質問や司会にも、かなりのウェイトがあることもまた事実です。 …

自説の主張を中心に(口頭発表の構築2)

これもまた、論文でもほぼ同じことなのですが、聴衆が「この人、いったい何が言いたいのだろう?」と思うような発表がけっこうあります。しかし、多くの場合それは不勉強とか準備不足ではなく、全く逆に、資料豊富(あるいは資料過多)で、ついでに発表時間…

口頭発表の構築

研究会や演習などで研究発表をする際に、どのようなことに留意したらよいでしょうか。「論文・レポートの書き方」については前に書きました。研究内容を考案する方法は、ほぼこれと同じです。問題は、「口頭発表」という形式としてしつらえる場合です。 1)…

発表要旨の書き方

研究発表の内容を考えるのもさることながら、発表内容を予告する発表要旨を書くのも、なかなか大変な仕事です。どのようなポイントがあるのでしょうか? 1)発表内容の分かるような題目をつける これはとても大事なことで、一般に何々論とか、何々の考察、…

発表時間の厳守

古くて新しい研究発表の鉄則、それは、「時間を守る」ことです! もちろん、多くの場合、聴衆は発表を待ち焦がれています。期待するからこそ、わざわざ足を運んでくれたのです。では、それに報いるためには、存分に時間を使い、持ち時間を過ぎてもなお、自説…

テクストと場所

1週間後に川端文学研究会というある日、有島武郎研究会のシンポジウムをサボって、私は一人浅草に出かけました。当時はまた鬼のように学会・研究会にこまめに顔を出していたものです。川端の方で、『浅草紅団』を横光利一の『上海』と比較して、都市文芸の…

東京は人が多すぎる(『東京物語』2)

『東京物語』は、パラマウント社の映画で、レオ・マッケリー監督の『明日は来たらず』と関係が深いことが指摘されています。こちらは老夫婦が子どもたちの家で厄介者にされ、見ず知らずの他人に親切にされる話ですが、二つの映画が決定的に異なるのは、一方…

言葉の音楽(『東京物語』1)

小津安二郎監督の『東京物語』で、戦死した次男の嫁である紀子(原節子)のアパートに、義母・とみ(東山千栄子)が泊まるシーンがあります。長男も長女も悪気はないけれど、生活に余裕がなく、尾道から出て来た老父母を大事にしません。熱海の旅館でも休め…

卒業論文心構え

卒業論文の仕上げの時期にかかってきました。私が学生だった頃は、卒業論文を書くのは一大事業で、何カ月かは夜昼逆転の生活を送ったり、大学や人前に姿を見せない引きこもりになったりするのは普通のことでした。100枚もの論文を書くのは今でも易しいこ…

無限の解釈項

2項対立の図式によるソシュールの記号学とは異なり、チャールズ・サンダース・パースの記号学は、表象・対象・解釈項の3項対によって記号を理解します。これをパースは、第一次性・第二次性・第三次性として一般化し、第一次性についての第一次的記号、第一…

死んだサイト(ネット・エチケット3)

休眠状態の掲示板。捨てられたホームページ。主宰者の亡くなったブログ。そのようなサイトも、基本的にはサーバーの管理者が手を加えない限り、半永久的に残ります。そこに他人の情報が掲載されていれば、その情報も、半永久的に人目にさらされ続けます。そ…

求心的/離心的(レポート・論文の書き方6)

「文庫本一冊で論文を書く」という言い回しがあります。小説なら小説1作品だけを徹底的に読み込んで、それに対して自分の持っている理論のフレームだけを適用して論じる、という意味です。概ね、〝安直な論文の書き方〟として否定的に見られる論法なのですが…

起承転結―再び(論文・レポートの書き方5)

学期末が近づき、レポートの執筆に頭を悩ませる季節となりました。簡単にレポートを書けるフレームワークを示してみましょう。文学・映画準拠でまとめてありますが、他の対象にも、もちろん拡張可能です。6枚のレポートを書くとしたら、次のように構想してみ…

掲示板への投稿(ネット・エチケット2)

LMS(授業支援システム)上の掲示板や、無料掲示板などで、授業に関する質問・相談、意見交流、補足情報の提供などを行っています。ところが、これらが今一つ盛り上がらないのです。学会の席上、他大学の担当者たちと意見を交換したところ、次のような事由が…

色っぽい文章(言葉に付加価値を!2)

大学では初年次の導入教育における、基礎的スキルを育成する授業開発が盛んで、コンピュータリテラシー、英語能力のほか、言語運用に関するセミナー型の授業が、広く行われています。人に読ませるべきリポートを書いても、いっこうに感想文の水準を出ない、…

言葉に付加価値を!

YU教養教育「詩は滑稽だ」の授業では、詩を読むにあたって覚えておくとよい、比喩の理論や、配置の理論について概説しています。すなわち、隠喩・提喩・換喩・直喩の四大比喩やアイロニー、反復や倒置法などです。たぶん、TUADの文芸研究入門「宮澤賢治の文…

詩を読む2

「詩は滑稽だ」とは、谷川俊太郎「世間知ラズ」の一節です。これをタイトルに借りて、前期のYU教養教育では、抒情から反抒情への現代詩の流れを概括し、『ひつじアンソロジー 詩編』をテキストにして、具体的に詩の読み方を解説しています。詩の読み方として…

アクロバット(論文・レポートの書き方4)

こんなことを教える先生はいないんじゃないかと思いますが、私は、論文ではできることならアクロバットをやるべきだと考えています。アクロバット、それは、読む者をあっと言わせるような論述のことです。しかし、それは単なる無根拠や支離滅裂とはもちろん…

[重要]ファイル・バックアップ

卒業論文の準備を始める時期を迎えました。構想や書き方について、少しずつ取り上げていくつもりですが、論文を執筆しようとする際の、基本的な心得があります。それは、「ファイルのバックアップ」なのです! バックアップ? それが卒論対策? と疑問をもつ…

言葉のあて先(レポートの書き方3)

論文を誰に向けて書きますか? 一番単純な答は、「先生に向けて」でしょう。そのレポートを読んで評価する人を念頭に置いて書くのは、基本です。が、それが教員への迎合や阿(おもね)りになるとすれば、それは書く側以上に、教員が良くないのです。自分の学…

雑草魂(レポートの書き方2)

テクストは岩塩のようです。入口も出口もなく、硬くて歯が立たず、やたらに刺激的なだけです。何をどう論じてよいやら分からず、言いたいことはもう既に言われてしまっている。それでも、何か書きたい気がします。私でなければ、誰にも思いつかないような何…

品評をしないこと2

MG表象文化論の一節「私は嫌いな食べ物がないので何でもよくかんでおいしく食べます。文芸や映画も同じです。考えてごらんなさい、大きなお皿にごちそうが並んでいて、ただ1コだけ、とてもすっぱい食べ物がのっている。それを理由として、ごちそう全体を食…

アイロニー

とても散らかった部屋を見て、「この部屋はずいぶんきれいだね」と発話する時、それはアイロニー(皮肉)だと言われます。現代詩の言葉遣いはアイロニーに満ちていて、ストレートなメッセージとしては伝わってきません。例えば「詩は滑稽だ」という谷川俊太…

何がおもしろい仕事

就職相談に来る学生に、「先生はどうしてこの仕事に就くことに決めたんですか」と聞かれるのですが、答えられません。いつ決めたんだろう? いや、決めなかったし、悩まなかったですね。だから、就職に関して、私は良いロールモデル(お手本)にはなれません…

考えずに答えよ

「では、このことについて、あなたはどう考えるのですか?」 「……(無言)」 毎年の演習発表で繰り返される光景です。発表者は、質問があると、しばらく、時としてかなり長い間、考えます。「質問をどうぞ」と指名すると、質問者もまた、しばし無言のまま、…