Project M Annex

日本近代文学・比較文学・表象文化論の授業や研究について、学生や一般の方の質問を受けつけ、情報を発信します。皆様からの自由な投稿を歓迎いたします。(旧ブログからの移転に伴い、ブログ内へのリンクが無効になっている場合があります。)

2006-01-01から1ヶ月間の記事一覧

詩を読む

「詩は難しい。特に現代詩は」というのが、おおかたの感触と思います。確かに、詩はことばの数が少なく、従って明示的な情報量が少なく、その反面、象徴や修辞などの深い意味や言外の意味に覆われていて、解釈も理解も容易ではないと思われているようです。…

〝感動をありがとう〟?

そんなに簡単に、感動してよいものでしょうか? 世の中には、それほど多くの、感動すべきものがあるのでしょうか? 何にでも興味を持ち、好奇心旺盛に見ること。学校ではそう教えますし、それはどうやら脳の老化防止にもよいようです。しかし、何にでも感動…

メトニミー(映像の)

フリッツ・ラング監督『M』において、盲目の風船売りは、幼女誘拐犯が吹いていた口笛の『ペール・ギュント』をたよりに犯人を見つけます。誘拐される少女はボールで遊んでいましたが、誘拐された後、そのボールが転がり、犯人にもらった風船人形が電線に絡ま…

卒業論文

今年度の卒業論文発表会の時期ですが、既にもう、来年度の卒論の相談が始まっています。卒論の執筆は、「書く」「読む」という行為を本質とする文学に関わる者としては、特別の意味をもつ作業であるように思われます。もちろん、卒論だけでなく、すべての書…

メタファー(映像の)

キューブリック監督『2001年宇宙の旅』の第1部から第2部への移り目で、猿人の投げ上げた骨器のショットが宇宙空間を漂う宇宙船のショットへと連続する場面があります。骨=宇宙船は、どちらも円筒形をしていて、形態の類似性は明らかです。 ここから、宇宙船…

語り

小説に代表される物語形式のテクストを、誰かが誰かに対して何かを語っているという現象として理解する方法論を、語り論(ナラトロジー)と呼びます。語り論は、さまざまに精緻化されましたが、基本構造としては、どのような「語り手」が、どのような「聴き…

孤独原則

あなたの心は私には見えず、私の痛みはあなたには分かりません。だから、最後のところで人は孤独です。むしろ、人に囲まれているとき、活動しているときこそ、孤独は際立ちます。人は一人では生きられませんから、共同体を作り、社会を作り、ことばと情報を…

ゆうキャンパス単位互換

ゆうキャンパスの仕事をしています。ここしばらく、06年3月から始まる大学間の単位互換の準備で忙しいです。 去る05年12月に、コンソーシアムの全国フォーラム(金沢大学にて)で高大連携の発表をした際、枕の部分で「日本近代文学の学会には千数百人の会員…

「大人の仕事は、決してふるさとへ

帰ることではないから」。坂口安吾「文学のふるさと」を、特殊講義の『探究I』の解釈の際に参照しました。この結末近くの言葉は、多分に意味深長です。「モラルがないこと自体がモラルである」「ふるさとはむごたらしく、救いのないものだ」という、メイン・…

表象のパラドックス

ジャンリュック・ゴダールの『映画史』3Bの章には、「我々の映画 真の映画とは 見ることのできない映画 それのみだった」というフレーズが現れます。この意味深長な発話は、ゴダールがアンリ・ラングロワのシネマテーク・フランセーズで貴重な映画作品を見…

断念と発話

教養教育「モンタージュとパロディの強度」への補足です。『官能小説家』において、桃水は自分では凡作しか書けないけれども、夏子に指導して、夏子を大成させることができそうになる。そしてまさにその際に、鴎外によって夏子を奪われるわけです。ここには…

額縁構造

小説構造の一つで、この構造を持つ小説を額縁小説と呼ぶこともあります。物語や映画その他のジャンルにも用いられます。枠構造・枠物語・枠小説などの呼び方もあります。 『アラビアン・ナイト』は、王シャフリヤールに毎夜、物語を聴かせることにより、殺さ…

氷の街から

最近、月に一度くらい上京します。からからに晴れた首都から、氷に閉ざされた私たちの街に帰ってくると、こんなに環境が違うのに、どんな場合にも同じ条件で評価されるなんて不当だ、と思ってしまいます。勉強なんてどこにいたってできる、と言うことは簡単…

品評をしないこと

Project M Annexでは文芸や文化などにかかわる話題を提供しますが、具体的な作家・作品について、その良し悪しを評価することはしないつもりです。特に、物故作家の作品にはそのようなコメントをすることもあるでしょうが、現存の作家や書き手の場合には慎み…

(比較)文学のおもしろさ

比較文学演習で取り上げた「堀辰雄とプルースト」への補足です。受容・影響関係を問題にする(フランス派)比較文学の場合、「結論」を問題にするならば、同一性の軸において展開したか、差異性の軸において展開したか、あるいは差異と同一の複合軸において…

根元的虚構

現実の事態や人の心理内容と、言葉とは必ずしも対応しないことがあります。嘘や虚構がその状態です。私はむしろ、現実や心理と言葉とが対応する機能は言葉にとって本質的ではなく、言葉が言葉じたいを表現することこそ基本的機能であると考えます。 何かと対…

カラー映画に見る昭和初期の日本

NHK・BSで放送された番組について、MGの授業で触れました。戦前にこれだけのカラー映画が残されていたことも、またそこに映された江戸東京のたたずまいを残した風景や、モダニズムに沸く都市空間のありさまの色鮮やかさも、とても新鮮な驚きでした。絵画でだ…

Project Mのリニューアル

Project M Annexの本館であるProject Mでは、ただいま徐々にリニューアルを進めています。別館を建てたら本館も改装したくなったというところです。もともと、1年以上もちゃんと更新していなかったので、デザインもさることながら、情報を入れ替えなければな…

卒論指導の懺悔

今日はこれから、MGの講義にでかけます。今年の初授業です。YUは明日からです。明日はまた、学部の卒業論文提出日でもあります。 ところで、今年度は、いつもの年に比べて格段に、卒論の指導ができませんでした! とても申し訳なく思っています。普段のよう…

コミュニケーション

通常、コミュニケーションする、と言えば、情報を伝達するという意味にとらえられると思いますが、伝達された情報の共有を検証しようと思えば、その検証の結果もまた別の情報として、再び検証されなければなりません。ある人の持っている情報と、他の人の情…

話し下手の話し上手

私は学生には常々、明確に話しなさい、積極的に自己表現しなさい、就職活動で困らないように普段から訓練しておきなさい、社会人になるということはコミュニケーションをするということだから、と教えていますが、自分自身、話し上手だとは全然思っていませ…

お涙ちょうだいもの

お涙ちょうだいもののようなドラマや物語の流行についての、新聞記事を読みました。「愛と死をみつめて」風の感動ものが、いかに多いことか。でもこれは今に始まったことではありません。物語と人との関係の中で、歴史的に繰り返されてきたことです。 受容者…

見えるもの・見えないもの

見えるものと見えないものの区別は、フレーム、シナリオ、カテゴリー、境界などに関わります。これらの介在・関与が、見えるものと見えないものとを区別している。つまり、見えるものを見えるようにしているのです。 映画・写真・絵画などが、それとして認知…

質問・投稿の仕方について

Project M Annexに質問や投稿をする場合には、下の「コメント」をクリックし、必要事項を入力して送信してください。メールアドレスやURLは入力しなくてかまいません。 質問にお答えする場合には、送られたコメントのテキストを、必要な限りにおいて引用する…

このサイトについて

Project M Annexは、ホームページProject Mの別館です。専門分野である日本近代文学・比較文学・表象文化論の授業や研究について、学生や一般の方の質問を受けつけ、情報を発信することを主な目的とします。 その他、大学・教育方法改善・大学間連携・地域連…