Project M Annex

日本近代文学・比較文学・表象文化論の授業や研究について、学生や一般の方の質問を受けつけ、情報を発信します。皆様からの自由な投稿を歓迎いたします。(旧ブログからの移転に伴い、ブログ内へのリンクが無効になっている場合があります。)

2006-05-01から1ヶ月間の記事一覧

近代・ポスト近代

チャールズ・ジェンクス『ポストモダニズムの建築言語』は、建築の近代主義が、単一の機能や価値観を追求してきたのに対し、多様な価値の共存と折衷を認める建築様式を、ポストモダニズムと呼びました。ジャンフランソワ・リオタールの『ポストモダンの条件…

暗黒の中における跳躍

ソール・A・クリプキ『ウィトゲンシュタインのパラドックス』で問題とされ、柄谷行人『探究I』などが大きく取り上げた概念です。もともとは、後期ウィトゲンシュタインの『哲学探究』などで述べられた「言語ゲーム」の理論、すなわち、言語のルールが共有…

詩を読む2

「詩は滑稽だ」とは、谷川俊太郎「世間知ラズ」の一節です。これをタイトルに借りて、前期のYU教養教育では、抒情から反抒情への現代詩の流れを概括し、『ひつじアンソロジー 詩編』をテキストにして、具体的に詩の読み方を解説しています。詩の読み方として…

空のキャデラック

ジャンリュック・ゴダールが『映画史』その他でアメリカ映画、特にスティーヴン・スピルバーグを批判したことは知られています。クロード・ランズマン監督の『ショアー』が公開された後、ゴダールやランズマンの間で映画の可能性が論議され、返す刀でスピル…

モンタージュ

映画学校に映画実験工房(クレショフ工房)を設け、様々なモンタージュの実験を試みていたレフ・クレショフは、一般に「クレショフ効果」と呼ばれる現象を発見していました。俳優イヴァン・モジューヒンの同じクロース・アップに、次々と違うフィルム断片を…

アクロバット(論文・レポートの書き方4)

こんなことを教える先生はいないんじゃないかと思いますが、私は、論文ではできることならアクロバットをやるべきだと考えています。アクロバット、それは、読む者をあっと言わせるような論述のことです。しかし、それは単なる無根拠や支離滅裂とはもちろん…

テクスト分析(物語4)

世界にはたくさんの物語があります。小説、神話、絵本、映画、ゲーム……。それらの多様性を、いわば「物語の文法」「物語の辞書」を作ることによって、統一的に把握することはできないでしょうか。このように考えて、記号学の方法を動員し、物語の一般法則を…

ノー・リプライ

中学時代、私を吹奏楽に誘った女子生徒は、ピアノが上手で、おまけに大のビートルズファンでした。その子の影響で、私もまたビートルズファンになりました。毎日、あけてもくれても、ビートルズばかりを聴いていました。 私は1週間続いたNHKFMの昼のビートル…

神話批評(物語3)

物語は自由自在な言説というよりは、行為する人の様態を、効果を上げるよう技巧を凝らして語ることであるとする主張は、既にアリストテレス『詩学』のミュートスの理論にあります。ミュートスとは、現在の「神話」の語源ですが、物語あるいは物語の筋を指す…

法=差別(物語2)

物語は共同体と深い関わりをもつ、とする考え方があります。もともと、モノをカタルという行為じたいが、人と人とを結びつけるコミュニケーションの重要な役割を担います。これに関して最も明快な定義を行ったのは、中上健次でしょう。『風景の向こうへ』に…

物語(疑問―回答)

物語を読むことはどのような行為なのでしょうか。それを現象的な局面からとらえてユニークなのは、ジェラルド・プリンスの語り論です。プリンスの語り論は、読むことのファクターを大きく導入した点が特記されます。すなわち、物語を読むことは、読者が、テ…

空中都市

修士課程のとき、演習の担当で横光利一の「蠅」を発表しました。8階の研究室に戻るときに先生とエレベーターで一緒になり、『上海』を読んで圧倒されたとお話したら、先生は、あれは最近、都市文芸学ということで話題になっています、と言われました。しかし…

夢は その先へは もう

暑い夏の日でした。本郷の通りを探し歩いて、その小さな記念館に入ったときには、汗がすーっと引いていきました。その時期には、建築家でもあった詩人が設計した家屋の模型や設計図などが、集中的に展示されていました。すれ違うのもやっとの狭い通路。でも…

[重要]ファイル・バックアップ

卒業論文の準備を始める時期を迎えました。構想や書き方について、少しずつ取り上げていくつもりですが、論文を執筆しようとする際の、基本的な心得があります。それは、「ファイルのバックアップ」なのです! バックアップ? それが卒論対策? と疑問をもつ…

小説(ジャンル)

小説は、他の言語形式をジャンルとしてパロディ化し、次々と取り込んでいくジャンルである、だから小説は、未だ発展途上の、未完成のジャンルである。このように主張したミハイル・バフチンの『叙事詩と小説』は、小説というジャンルの論議を大きく進めたよ…

対話/ポリフォニー

ミハイル・バフチンの文芸理論の代名詞となった概念です。『小説の言葉』では、小説の語り手はイデオロギー的な存在であるというテーマとともに、小説の語り手の声は一つではなく、由来を異にする複数の声が葛藤を繰り広げる対話の声であるとされます。『ド…

孤独原則2

マリオ・バルガス=リョサは、そのフローベール論『果てしなき饗宴』で、自分はエマに恋をした、ここ20年来の『ボヴァリー夫人』ブームで、多くの人がエマのことを言うのが堪らなく気がかりだ、でも、安心なことに、自分の愛するエマは、虚構の世界にいるの…

氷の街から2

季節は移り、春が来て桜が咲きました。けれども、私の中の冬は変わりません。私は、あの冬の日、からからに晴れた首都から帰ってきて、氷に閉ざされた街で凍えたことを忘れません。私は、高校への出張講義の帰り、吹雪でバイパスを超低速で走ったことを忘れ…

言葉のあて先(レポートの書き方3)

論文を誰に向けて書きますか? 一番単純な答は、「先生に向けて」でしょう。そのレポートを読んで評価する人を念頭に置いて書くのは、基本です。が、それが教員への迎合や阿(おもね)りになるとすれば、それは書く側以上に、教員が良くないのです。自分の学…

総目次(2006年3月~4月)〈2〉

【授業の補足】 アイロニー 何がおもしろい仕事 考えずに答えよ 先行研究への対応 様式と技術(映画の) 【こころ】 話し下手の話し上手2 加害者意識 啓蒙について 先読みについて 【動き】 文学とパワーポイント 人とネットワーク 第12回大学教育研究フォ…

総目次(2006年3月~4月)〈1〉

【サイト告知】 このサイトのポリシー 初心忘るべからず 【術語集】 シミリー(直喩) シネクドキー(提喩) メトニミー(換喩) 作者 ミメーシス 境界 共約不可能性 姦通小説 作者、テクスト、文化研究 発話と主体 係争中の主体 メタフィクション3 倒置法 …

雑草魂(レポートの書き方2)

テクストは岩塩のようです。入口も出口もなく、硬くて歯が立たず、やたらに刺激的なだけです。何をどう論じてよいやら分からず、言いたいことはもう既に言われてしまっている。それでも、何か書きたい気がします。私でなければ、誰にも思いつかないような何…

品評をしないこと2

MG表象文化論の一節「私は嫌いな食べ物がないので何でもよくかんでおいしく食べます。文芸や映画も同じです。考えてごらんなさい、大きなお皿にごちそうが並んでいて、ただ1コだけ、とてもすっぱい食べ物がのっている。それを理由として、ごちそう全体を食…