Project M Annex

日本近代文学・比較文学・表象文化論の授業や研究について、学生や一般の方の質問を受けつけ、情報を発信します。皆様からの自由な投稿を歓迎いたします。(旧ブログからの移転に伴い、ブログ内へのリンクが無効になっている場合があります。)

2006-06-01から1ヶ月間の記事一覧

ストゥディウム/プンクトゥム

ロラン・バルトの写真論『明るい部屋』(「暗い部屋[camera obscura=カメラ]」のもじり)に示された用語です。バルトの写真論はちょっとユニークで、まず、写真はコードのないメッセージ、つまり現実そのものだ、というものです。これは、根元的虚構論の…

起承転結―再び(論文・レポートの書き方5)

学期末が近づき、レポートの執筆に頭を悩ませる季節となりました。簡単にレポートを書けるフレームワークを示してみましょう。文学・映画準拠でまとめてありますが、他の対象にも、もちろん拡張可能です。6枚のレポートを書くとしたら、次のように構想してみ…

定型(物語5)

イーザーの『行為としての読書』やロトマンの『文学理論と構造主義』など、情報理論を取り入れた読解の方法論では、「テクストと読者とが各々所有する情報のバランス」が問題にされています。 イーザーのレパートリーは、テクスト・読者が所有する情報そのも…

暗闇の中における跳躍2

「私は、インターネットの中で笑い、インターネットの中で泣くでしょう。私の声は、言葉は、私の愛も、憎しみも、すべて、Uniコードに変換され、パケットに乗って送信されるでしょう。私はそこで、すべてを見、すべてを手にしますが、ほんとうは何も見えず、…

パセリ、セージ、ローズマリー、&タイム

私を吹奏楽に誘った女の子は、ビートルズファンになって私にビートルズを教える前は、サイモンとガーファンクルのファンで、それで私も最初にS&Gのファンになりました。まったく、かえすがえすも、主体性ゼロの中学時代です。 私は外国語オンチで、国際交…

鎮魂歌

私が中学生の頃、何か本でも買えと言われて、盛岡市肴町の東山堂書店の仮店舗(当時、新築中でした)のプレハブで、初めて買った単行本は、『ヒロシマの証言』という被爆記録集でした。それは、学生・主婦・労働者などが、突然の災厄に見舞われ、どのように…

掲示板への投稿(ネット・エチケット2)

LMS(授業支援システム)上の掲示板や、無料掲示板などで、授業に関する質問・相談、意見交流、補足情報の提供などを行っています。ところが、これらが今一つ盛り上がらないのです。学会の席上、他大学の担当者たちと意見を交換したところ、次のような事由が…

色っぽい文章(言葉に付加価値を!2)

大学では初年次の導入教育における、基礎的スキルを育成する授業開発が盛んで、コンピュータリテラシー、英語能力のほか、言語運用に関するセミナー型の授業が、広く行われています。人に読ませるべきリポートを書いても、いっこうに感想文の水準を出ない、…

言葉に付加価値を!

YU教養教育「詩は滑稽だ」の授業では、詩を読むにあたって覚えておくとよい、比喩の理論や、配置の理論について概説しています。すなわち、隠喩・提喩・換喩・直喩の四大比喩やアイロニー、反復や倒置法などです。たぶん、TUADの文芸研究入門「宮澤賢治の文…

小説(ジャンル)2

芸術としての文芸という観点から小説をジャンル論的に定義しようとする際に、第一に問題となるのは、まさに、小説というのは芸術なのだろうか?という疑問です。小説が広く娯楽として流通した時代に、哲学者・美学者たちは、小説に正面から向き合おうとしな…

満潮になると河は膨れて

院生時代、演習で横光利一の「蠅」を担当した話は前に書きました。それ以前からも横光は気にかかる作家ではありましたが、文庫本で出ている作品数が少なく、大半の作品は、河出書房新社版の全集が刊行された際に読んだのです。最初は、大学図書館に入ったの…

近未来SF(ジャンル)

近未来SF映画は、人類の文明にとって重要な事項であるテクノロジーの発達が、人間の意識と生存に対して、どのように関与するかを主要なテーマとしています。いわば、テクノロジーの倫理です。典型的には、ロボットとマッド・サイエンティストの組み合わせに…