Project M Annex

日本近代文学・比較文学・表象文化論の授業や研究について、学生や一般の方の質問を受けつけ、情報を発信します。皆様からの自由な投稿を歓迎いたします。(旧ブログからの移転に伴い、ブログ内へのリンクが無効になっている場合があります。)

(比較)文学のおもしろさ

 比較文学演習で取り上げた「堀辰雄プルースト」への補足です。受容・影響関係を問題にする(フランス派)比較文学の場合、「結論」を問題にするならば、同一性の軸において展開したか、差異性の軸において展開したか、あるいは差異と同一の複合軸において展開したか、この3つ以外にありません。

 堀が「美しい村」でプルーストから受容したのと同一の要素を表現し、それに自分なりの資質を付け加え、さらには受け継いだものと付け加えたものとの交錯において独特の展開をした、という図式に、特定のテクストを代入すれば、ほぼ説明の骨格になります。

 しかし、発動者・媒介者・受容者などの契機のそれぞれについて、論述する文体や配列のあり方によって、同じ図式であっても、まったく違う効果が生まれます。(フランス派)比較文学の方法論そのものについては再検討するにしても、差し当たりそのやり方でできることも大きいと思います。

 そして、比較を離れても、文芸研究は一般にそのようなもの、つまり、「結論」において独自性を出そうとしてもそう容易ではないが、論述の過程のあり方によって、受け取られ方も左右されます。むしろ、「結論」ではなく論述が大事です。そこにこそ、論ずることのおもしろさ、論を聞くことのおもしろさがあります。