Project M Annex

日本近代文学・比較文学・表象文化論の授業や研究について、学生や一般の方の質問を受けつけ、情報を発信します。皆様からの自由な投稿を歓迎いたします。(旧ブログからの移転に伴い、ブログ内へのリンクが無効になっている場合があります。)

冷たいメディア

 数百万にも上るといわれるブログ。ブログ現象には、人と文化を考えるヒントが散らばっています。

 元々、ホームページは冷たいメディアです。電子媒体による匿名性を基本とするホームページは、情報をファイル化して、相互に等価なものへと変換します。直接的な身体性は無効となり、この方式によってコミュニケーション可能な情報だけが残ります。どのように双方向性を高めても、この基本は変わりません。もっとも、生身の身体によるコミュニケーションが、純粋なコミュニケーションを実現するわけではありません。

 日記型サイトであるブログは、私的性質と公共的性質との矛盾をはらみ、この矛盾を賭金としています。私的なコミュニケーションは他者を排除しますが、他方、それが公開されている限り、他者のアクセスを拒否することはできません。自分は好きなことを書くだけだから、興味のない人は見ないでほしいと思ったとしても、公開されていれば、誰にでも見ることができるのがホームページです。ブログは、表向き誰も拒絶しないが、実は確実に拒絶しています。はっきり言って、多くのブログには、お仲間以外は入ってゆけないのです。

 その結果多くのブログは、不特定多数に閲覧されるが、書き込みするのは、それに比して極めて少数であるという閉鎖的なコミュニティと化しています。私生活、私的画像、はては個人間で交わされたメール。私的だからよいという居直りの下での垂れ流し。仲良しの常連、仲間うちの噂話。ブログは他者を抑圧し、批判を遮断し、介入を回避します。そこには、異質な他者や対象との出会いや、意想外の生成は期待できません。

 もちろん、すべてのブログがそうであるわけではなく、それがブログの性質のすべてであるというわけでもありません。私は、個人が運営する良質のブログをいくつか知っています。それらは、その人固有のテーマへの意志と、それを表現しようとする意志とに満ちています。さらに、このProject M Annexじたい、そうしたブログの性質を免れているなどとは全く思っていません。私はこれを書くことによってあなたを抑圧しています。ただし、そのことを自覚し、配慮するかどうかは、小さくはない分かれ目だろうと感じています。

 批判、介入、意見の投稿をお待ちしています。