Project M Annex

日本近代文学・比較文学・表象文化論の授業や研究について、学生や一般の方の質問を受けつけ、情報を発信します。皆様からの自由な投稿を歓迎いたします。(旧ブログからの移転に伴い、ブログ内へのリンクが無効になっている場合があります。)

卒業式

 学校という職場に勤めていると、卒業式は年中行事で、毎年繰り返す、印象深い節目となります。印象深い理由は、言うまでもないことですが、それは、完成であり、また出発であるとともに、何よりも、別れであるからです。卒業式を最後に、2度と会わない、ということも、稀ではありません。というより、大半の学生とはそうです。

 実際、うれしいだけの思いではありません。卒業論文などの、研究という場で培った間柄は、他のどのようなものとも違います。完成に導き、出発を喜んだその時に、さよならを言わなければならないのが、大学というシステムにほかなりません。けれども、これはこの職業の、いわば宿命ですね。お客さまと別れるのが悲しくてやってられないとしたら、誰もパイロットなど、できないわけですから。

 私の卒業式の日は、大雪でした。記念講堂の前で撮った、証書の筒を持ち、晴れ着とスーツで着飾った友達の写真は、降りしきる雪のシャワーを背景にしています。同級生とは、格別なものです。色々な友達がありますが、同級生との絆は、他に掛け替えのないものでしょう。たとえ2度と会わなくてもね。卒業式は、「同級生」という関係が、真に始まる瞬間でもあります。

 大学は、これまでになく、変わりつつあります。卒業生が、もっと気楽に遊びに来れるような場になっていければいいとも思います。まあ、大半の卒業生にとっては、大学なんてもう何の関係もないのも当然なんですけどね。でも、「卒業生」という身分も他で代替はできません。卒業していない大学の卒業生には、どうしたってなれないのですから。どうぞ、これから必要な時には、この身分をどんどん利用してください。

 おめでとう! あなたが、自分の空で大きく羽ばたくことを祈ります。