Project M Annex

日本近代文学・比較文学・表象文化論の授業や研究について、学生や一般の方の質問を受けつけ、情報を発信します。皆様からの自由な投稿を歓迎いたします。(旧ブログからの移転に伴い、ブログ内へのリンクが無効になっている場合があります。)

人とネットワーク

 第12回大学教育研究フォーラムは、研究発表・小講演・ラウンドテーブル(RT)とも複数会場に豊富なテーマが用意されて、2日目も盛況でした。私がこの日聴いた内容は、実に印象的でした。

 このフォーラムの出席者は、多くが各大学の高等教育センターやFD関係者ですが、今回は情報センターの関係者が比較的多く、報告される話題もeラーニング関係が相当な割合を占めていました。現在、授業改善で何が喫緊の課題になっているかは、ここからも分かります。この私も今回はITを用いた修学支援の発表を行い、6月の別の学会ではeラーニングとFDとの関連について報告することになっています。

 ところで、小講演で、ある大学のカウンセラーの方が、学生相談現場の現状について語ってくれました。権力的な教授のアカデミック・ハラスメントや、引きこもり学生の事例などのほか、私が資料の片隅にメモしたのは、「情報の取りすぎは心を壊す」という命題です。常々、冷たいメディアとしてのインターネットに関連して、私が考えていたこととも一致し、興味深く聴きました。多くの人がそうであるように、私も自分の心が壊れそうになると、情報を遮断しています。

 続く午後のRTでは、Web2.0レヴェルの国内外の最先端eラーニングシステムの紹介が行われ、私は文字通り目を丸くして聴いていました。Web2.0は、双方向・集団的なアクセスによって、動的・自己生成的に作り出されるネット上のシステムを指し、例えばブログやWikiもそれにあたります。技術系の話が大半を占めたせいか、ちょっとついていけない部分もありましたが、私がやっているシステム構築なんて、これらに比べると単なる子どもの遊びでしかないなと思いました。

 情報は人の心を傷つけ、しかし情報の進展を止めることはできません。今、ICT(IT・コミュニケーション)の領域で進んでいる事態は、これまで人間が体験したことのないものです。教育・研究が人間と文化を相手にしている限り、ここから逃げるわけにはいきません。しかし、話をした参加者が口々に言うのは、FDは結局、人と人間関係に帰するものだということです。教育におけるテクノロジーと人間とのインターフェイス、それが今後のFDの大事な課題となるわけです。

 帰ったらいろいろやることがあるな。今日はこれから、信州大学のeラーニング視察調査に回ります。