Project M Annex

日本近代文学・比較文学・表象文化論の授業や研究について、学生や一般の方の質問を受けつけ、情報を発信します。皆様からの自由な投稿を歓迎いたします。(旧ブログからの移転に伴い、ブログ内へのリンクが無効になっている場合があります。)

暗闇の中における跳躍2

 「私は、インターネットの中で笑い、インターネットの中で泣くでしょう。私の声は、言葉は、私の愛も、憎しみも、すべて、Uniコードに変換され、パケットに乗って送信されるでしょう。私はそこで、すべてを見、すべてを手にしますが、ほんとうは何も見えず、何も得られないのです。」

 「私は、あなたを検索し、HPを通じ、掲示板を開設し、blogに書き、SNSに登録し、メールを出して、すべてのテキストメッセージを、あなたに向けて発信するでしょう。あなたから何も返信がなくても、あなたがそれを見てくれているだけで、私のメッセージは、意味をなすのかも知れません。けれども、私の言葉は一切の確証を得られず、あなたの愛も、憎しみも受け取れず、私のメッセージは、ネットの暗闇に吸い込まれ、そしてどこへともなく、消えていくのです。」

 「インターネットは、双方向システムであるというのは、幸運な場合にそう見えるだけで、実際のところ、それは一方通行でしかありません。私がこれだけ書いたのに、私が心をこめて書いたのに、あなたは何も応えてくれません。私にはあなたが見えず、あなたには私が見えません。私はあなたに触れることができず、あなたは私に触れることができません。限界づけられたコミュニケーションの方式の中で、いつしか私は、コミュニケーションとは元々、何であったのかを、忘れてしまうのです。あの頃、私は、いったいどのような声で、あなたと話していたのかを。」

 「私は自分をテキストに変換して、インターネットに飛び込みます。そこは、真っ暗闇で、救いのない空間です。1度の送信、1ファイルのアップロードが、各々、危険な賭にほかなりません。どうしてそんなリスクを負うのでしょう? それはたとえ、どれほど暗闇で跳躍するような行為であったとしても、私は自分をネットワークから切り離すのが怖いのです。それは、もう決定的に、あなたと私とのコンタクトを解消することです。」 「たとえ、切断とほぼ同義の接続であったとしても、そこに一瞬のアクセスでも、1行にも満たない返信でも、手にする可能性があるとすれば、私は再び、ネットワークに繋ぐほかにありません。私は毎日、毎時間、そのようにして、インターネットという暗闇の中で、跳躍を続けています。暗黒の中での跳躍は、こうして、今や、私の生活の常態です。私は、インターネットの中で生き、インターネットの中で死ぬでしょう。」