Project M Annex

日本近代文学・比較文学・表象文化論の授業や研究について、学生や一般の方の質問を受けつけ、情報を発信します。皆様からの自由な投稿を歓迎いたします。(旧ブログからの移転に伴い、ブログ内へのリンクが無効になっている場合があります。)

質問の仕方、答え方

 発表の構築にも一定のやり方があるのと同様に、質問や応答の仕方にだって、それなりの方法があります。もちろん、演習や研究発表をまともに成立させることは、口頭発表に多くを負っていますが、質問や司会にも、かなりのウェイトがあることもまた事実です。

 1)発表が終わってから質問を考えるの?

 たいがいの研究発表は、発表30分・質疑10分とか、25分・5分とかです。学校の授業で、発表も質問もだらだらとやるのは、私は良くないやり方だと思っています。公式の場では、決してそんなことはありません。さて、短い質疑応答時間になってから考えたのでは、質問など出てこないのが当然です。聴衆は、発表中に質問を考えながら耳を傾けましょう。それ以前に、何も質問が出ないのは、わざわざ準備して発表する方に失礼です。もっとも、こんなの、質問もする気にならないよ、というような代物も、ないわけではないのですが……。

 2)明らかに答えられない質問はしない
 そのような質問の第一は、発表内容と無関係の質問であり、さらにその最たるものは、発表と関係のない質問者の意見の表明でしかない質問です。多くの場合、これには他の聴衆もゲンナリしますね。「あの人、ただ発言したかっただけなんじゃないの?」と言われます。時間のムダです。

 3)質問を予期して発表の準備を!
 それに対して、当然、出てくるであろう質問が寄せられても、発表者が答えられないのは、発表者の準備に問題があるとも言えます。時間的物理的制限のある研究発表では、すべてのカードを切ることはできないので、不十分なところは必ずあります。説明不足、省略した情報、発展しうる話題、そのような「要質問箇所」は、発表には必ず存在します。発表者は、発表時の質問の動向を予想して、発表原稿や資料を作りましょう。そのためには、時間的物理的に、やや余裕をもって準備を行うことが大事なのですが。

 4)構想に対する結果を問うこと
 質問と応答のやりとりで重要なのは、「言おうと思っていたこと」と、「現に言われたこと」との間の差異、つまり、その発表が目標としていた内容が、十分に達成されていたかということです。当然、そのような目標も達成も聴衆の受け取り方によって多様ですから、質疑応答は意想外の豊かな展開をはらみます。そこにこそ、このような場のおもしろさが成り立つのです。これに留意して行われるコミュニケーションは、参加者全員にとってメリットとなります。

 まあもちろん、言論は自由ですから、何をどのようにやりとりしたって構わないわけですけれど、勝手な意見の単純なぶつけ合いというのは、往々にして、終わった後に、「今のはいったい何だったんだ?」ということになりがちですね。