Project M Annex

日本近代文学・比較文学・表象文化論の授業や研究について、学生や一般の方の質問を受けつけ、情報を発信します。皆様からの自由な投稿を歓迎いたします。(旧ブログからの移転に伴い、ブログ内へのリンクが無効になっている場合があります。)

補足集

先行研究への対応

論文の書き方や、演習発表の準備において、多くの学生から聞くことのできる感想が、「他人の論文を読むと納得させられてしまい、自分の考えを独自に表明することができなくなる」というものです。誰しも、感じたことのある思いだろうと思われます。 他人の意…

様式と技術(映画の)

映画史の講義は、少しなりとも映画に興味のある学生が受講すると思われますが、それでも大半の学生が、「サイレント映画をまともに見るのは初めて」ということです。それも、瞳を切り裂く映像から始まる、ルイス・ブニュエルの『アンダルシアの犬』などから…

先行研究の引用の仕方

論文の書き方で、初め必ず戸惑うのが、先行研究の引用や参照の仕方です。先行研究(「従来の研究」ともよく呼ばれます)が、それじたいに価値があるのはもちろんのことです。しかし、論文を書く場合の先行研究は、それの価値として完結しない、ということを…

論文の探し方(日本近代文学)

質問:「日本近代文学関係の研究論文は、どのように探したらよいのですか?」 1)「その作品の研究史を探す」 人気作家の場合、一つの作品の研究論文が数十から数百にも上ることが少なくありません。『國文學 解釈と教材の研究』(學燈社)や、『国文学 解…

感想文と論文

レポートの書き方に関して、「感想文と論文とはどう違うんですか?」と聞かれることがあります。確かに、明確な境界線があるわけではありませんが、両者は歴然と違います。 1)「感想文は対象を大まかにしか分析しないが、論文は詳しく分析する」 「分析す…

ネット・エチケットについて

今後、eラーニングも盛んになり、メールによる質問が増えることと思います。ネットワークのエチケットについては、情報処理の基礎として学ぶものと思うのですが、よく分かっていない人が多いようです。Eメールは便利であり、電話と違って相手を拘束しない…

レポートの書き方

基本に忠実に、というのはどんな作業にも通じる鉄則です。車の運転などはその典型で、停止線一時停止、巻き込み確認、車間距離の確保、などを心がけていれば、重大な事故は起こりにくいのです。そういうわけで、論文・レポートの書き方の基本は、「起承転結…

詩を読む

「詩は難しい。特に現代詩は」というのが、おおかたの感触と思います。確かに、詩はことばの数が少なく、従って明示的な情報量が少なく、その反面、象徴や修辞などの深い意味や言外の意味に覆われていて、解釈も理解も容易ではないと思われているようです。…

「大人の仕事は、決してふるさとへ

帰ることではないから」。坂口安吾「文学のふるさと」を、特殊講義の『探究I』の解釈の際に参照しました。この結末近くの言葉は、多分に意味深長です。「モラルがないこと自体がモラルである」「ふるさとはむごたらしく、救いのないものだ」という、メイン・…

断念と発話

教養教育「モンタージュとパロディの強度」への補足です。『官能小説家』において、桃水は自分では凡作しか書けないけれども、夏子に指導して、夏子を大成させることができそうになる。そしてまさにその際に、鴎外によって夏子を奪われるわけです。ここには…

(比較)文学のおもしろさ

比較文学演習で取り上げた「堀辰雄とプルースト」への補足です。受容・影響関係を問題にする(フランス派)比較文学の場合、「結論」を問題にするならば、同一性の軸において展開したか、差異性の軸において展開したか、あるいは差異と同一の複合軸において…

カラー映画に見る昭和初期の日本

NHK・BSで放送された番組について、MGの授業で触れました。戦前にこれだけのカラー映画が残されていたことも、またそこに映された江戸東京のたたずまいを残した風景や、モダニズムに沸く都市空間のありさまの色鮮やかさも、とても新鮮な驚きでした。絵画でだ…